中国の高齢者介護市場の現状と展望(1)国の政策

中国の高齢者介護市場は、インフラや人材・介護サービス等の面で多くの問題を抱えています。
中国では65歳以上の高齢者数が、現在の1.2億から10年後に約2億と総人口の14%となることが国連の統計で予想されています。
また、「一人っ子政策」の影響で、それら老人を支える中高年世代が先細りとなり、子供が親の面倒を見るといった伝統から他人による介護という形に変えざる負えない状況です。
一方、中国の高齢者介護市場は日本のような介護保険制度が無く、インフラや人材・介護サービス等の面で多くの問題を抱えており、日々増え続けている介護需要を十分満たせていません。
■高齢者向け介護施設の極端な不足
国務院が発表した統計によると、2010年末で介護用ベッドは320万床で60歳以上の高齢者総数の僅か1.8%ほどです。それから5年経て数字は上がっていると見込まれるものの、国際標準(高齢者総数の約5%)に大きく及びません。中国民政部では、政府と各地方の財政資金や社会資金などを組み合わせてインフラの整備を行っているところです。
■介護サービスに携わる人材不足
中国民政部の統計によると、本来1,000万人近くの養老介護専門人材が必要と見込まれているのですが、資格を持った人材は現在3万人程度に過ぎません。身内の老後は子供が見るべき。という昔ながらの習慣だったり、日常生活の面倒を見ている日本で言う”お手伝いさん”が、介護的なことを行っている現状が介護専門人材を必要としない背景のようです。
また、専門人材でないため「給料が安い」「労働時間が長い」、また当該職種に対する社会的偏見等さまざまな理由により、あえて希望してこの業界に入ろうとは思わないようです。
■養老介護業界の認定資格制度
専門的な知識を持った養老介護職員を認定資格制度の設立に向け、現在中国民政部は積極的に動いています。日本の優れた介護制度を学び制度設計しているようで、具体的な内容については近日中にも公開されると聞いています。(詳しは今後お知らせします)
介護サービスの研修体制を整え、その研修を経た有資格者の就業を実現させ高度な介護を提供することで、養老介護の質を高めることが期待されます。その介護職員の中には食事を提供する「栄養士」「調理師」といった分野の職種も含まれ、養老関係の知識の習得が望まれます。
■中国の都市部と農村部との違い
中国には日本のような介護保険は無いものの、都市部にはそれに似た”養老保険”という制度があります。上海や北京といった都市部在住の約4,000万人ほどの高齢者のみを対象としており、殆どの農村部では保険なし。という状況です。つまり、高齢者の介護は全て身内による実費払いとなります。
昔なら、多くの子供が親の面倒を見るのでそれでもやっていけたでしょうが、現在では子供は一人っ子。出稼ぎで離れて暮らしている。そんな現実の今何もしなければ将来破綻するではないでしょうか?
■中国養老介護のこれから
中国の養老制度の発展に合わせ、多くの日系介護関連企業が中国養老業界へ参入していくと予想されます。しかしながら、中国には独特な文化や習慣や制度などがあるのでそれらを否定することなく受け入れ、その上で付加価値としての日式の介護サービスを提案したら良いように思います。
日本の介護関連企業の多くは、今ある日本国内の問題(施設が足りない。介護人材不足等)で手一杯という実情も分かりますが、隣の中国やアジアでは優れた日本の養老サービスへの期待があります。日本人以外の高齢者の幸せのためにもが是非ノウハウを広げて貰いたいものです。
~以降、その2に続く~