中国の食品安全法が改定される影響について

食の安全をめぐる事件が問題となっていることを背景に、「史上最も厳しい」と言われる食品安全法の改正が10月1日から中国で施行されます。
今回の改定では、粉ミルクなど乳幼児の食品に関する品質管理を強化するとともに、違反した場合の罰則も強化されています。国としても徹底した管理を行うための人的資源や体制などが不足していると認識しているようですが、海外に輸出される食品は問題が生じた場合の国際的な影響が大きいこともあり迅速な対応となったようです。
ということで、この食品安全法の改定が日本企業にどう影響するのか考えてみました。
■食にまつわる関連事件
2004年の偽粉ミルクにより幼児が死亡する事件から始まり、2008年の中国製冷凍餃子事件やメラミンにより汚染された粉ミルク。2010年には下水道の汚水を精製した食用油。最近では日本マクドナルドの期限偽装の鶏肉を事件など。食の安全にまつわる事件は後を絶ちません。
海を隔てた私達の耳に入るニュースは全体の一部分で、中国国内では2004年から2011年までの8年間で17,000件もの事件が発生しているそうです。
■なぜ偽装・期限改ざん・違法添加物の使用などが行われるのか
一言で言えば。。管理体制に欠陥がある場合、利益追求に走ってしまうのではないでしょうか。
①社会的信用体系の欠落と食品メーカの利益市場主義
中国ではまだ規則に違反しても支払う代価が少ないこと。また、小規模の企業が多く価格競争に晒されていてモラルを無視する傾向があること。
②技術力が不足しており且つ、管理体制が不十分
私営企業や零細企業は技術や管理においておしなべて水準が低く、食品安全基準に対する意識も低いため食の安全問題を起こしやすいこと。
③管理基準・制度の欠陥と不履行
食品関連の基準や法規(基準)の整備が不十分で罰則が甘い。第三者機関にる検査制度を取り入れているが設備・技術が遅れていたり権限が弱かった。また、食品安全の管理・執行責任が複数部門に分散され管理責任が不明確であった。
■外資(日系)企業にとって追い風ではないのか?
今回の改定により、当然日系企業にも厳しい審査の網が掛かるようになると思いますが、日頃日本国内で厳しい審査を経ている訳なので中国側に合わせるのはさほど難しくないと考えています。むしろ、ゼロからスタートしなければならない中国企業は未知の領域に踏み込む訳で、今回の食品安全法の改定基準に合わせるのは大変なのではと考えています。(今後外資からノウハウを入手するなど)
ということで。
厳格な品質管理、成熟した物流輸出の管理体制や優れた食品検査技術を有し、追跡・記録が可能な食品トレーサビリティを既に実現している外資(日系)企業にとって今回の改定は追い風になるのでは。と考えています。
★補足として、JETROから今回の改定で日系企業が留意すべき点についての記事が出ていましたので幾つか記載しておきます。
◆許可取得部門が「国務院食品薬品監督管理部門」に一本化された。
◆①食品の安全管理制度、②従業員の健康管理制度に加えて、③トレーサビリティシステム、④自主検査制度の確立が義務付けられた。
◆飲食サービス提供者は次の各事項を遵守する。①原材料を管理する上での要求を制定、実施し、食品安全基準に合致しない食品原材料を購入しない。②加工の過程において加工予定の食品および現材料を検査し、腐敗による変質等に該当するものについて加工又は使用しない。~以降省略~
◆遺伝子組み換え食品を取り扱う場合、規定に従い明確に表示する。
◆特殊食品(保健食品、特殊医学用途調整食品および乳幼児用調整食品等)に関する新規定を順守すること。
◆違法行為者に対する処罰が過重された。(過料金額の引き上げ、責任者の拘留の追加、重大違法行為者の将来の活動制限強化)
などです。